狩猟というと「銃で撃つ」場面を思い浮かべがちですが、狩猟おじさんは「本当の仕事は撃ったあとにある」と言います。下処理しだいで変わるジビエの味、腐らせてしまった失敗談、撃った獲物を放置してはいけない決まり、そして弾が当たっても仕留めきれない「半矢」のこと。
狩猟シーズン真っ只中に、命をいただく現場のリアルを率直に語った回です。狩猟に興味がある方はもちろん、ジビエを食べる側の方にも聴いてほしい内容です。
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この回の話題
| 時間 | 話題 |
|---|---|
| 00:40 | 北海道から届いた鹿肉14kg |
| 01:34 | ジビエは下処理がすべて。茹でこぼしと圧力鍋 |
| 02:16 | ジビエは本当に安いのか |
| 03:22 | モモ肉の燻製、まさかの失敗 |
| 04:46 | 腐った匂いと獣の匂いは別物 |
| 05:26 | 獲ったらその日のうちにさばく理由 |
| 06:16 | 狩猟の本質は撃ったあとにある |
| 08:52 | 撃った獲物の放置はNG |
| 09:54 | 仕留めきれない「半矢」 |
| 12:20 | どこを狙うのか。頭と心臓 |
| 13:46 | 想像以上に強い生命力 |
| 15:42 | 骨のアクセサリーができるまで |
ジビエは下処理がすべて
狩猟おじさんのもとには、北海道の知人から正月用に鹿肉が14kgほど届いたそうです。沢田は以前、鹿肉バーガーを食べたときに意外とクセがなかったと話します。
鹿肉はおいしく食べられる肉ですが、決め手は調理と下処理。臭みのあるイノシシ肉なら、濁ったお湯を捨てては茹で直す「茹でこぼし」を2〜3回。硬い肉なら圧力鍋で一度やわらかくする。こうした手間が欠かせません。
ジビエは本当に安いのか
「肉は自分で獲る」と聞くと安上がりに思えますが、肉をただ食べるだけなら、市販の豚肉や鶏肉の方が圧倒的に安い、と狩猟おじさんは言い切ります。獲る技術、さばく技術、おいしく調理する技術まで含めて、それでも自分でやるのは、それ自体が暮らしの一部だから。狩猟を始めて5年目、獲物にも野菜のように豊作・不作の波があると感じるようになったそうです。
モモ肉の燻製、まさかの失敗
普段、モモ肉は塩漬け・塩抜き・乾燥・燻製と手間をかけて干し肉にし、1年以上保存します。ベーコンと同じ作り方です。
ところが今シーズンは、頼ってきた人に肉のほとんどを分け、手元に残したモモ1本を燻製にしようとしたところ、乾燥させている途中で腐らせてしまいました。塩漬けが甘かったのか、気温が高かったのか。腐ったことは匂いですぐに分かったそうです。
「臭い」にも種類がある
同じ「臭い」でも、腐った匂いと獣の匂いはまったくの別物です。獣の匂いの正体は主に血の匂い。そしてオスの場合はホルモン由来の独特の匂いが加わります。そのため、食肉としてはメスを選びたい、というのが猟師の本音だそうです。
獲ったら、その日のうちにさばく
獲物はできるだけその日、遅くとも翌日までにさばきます。翌日になると死後硬直で体がこわばり、寒い時期は凍ってしまって皮がはぎにくくなるからです。せめて皮だけはその日のうちにはぎたい、とのこと。
狩猟の本質は「撃ったあと」にある
狩猟というと、撃ち落とす感覚やゲームのような面白さに目が向きがちです。でも命を奪った以上、そこから先こそが本質ではないか。沢田のこの言葉に、狩猟おじさんも深くうなずきます。
番組では、福島県では捕った獣の肉は基本的に自家消費に限られ、食べない場合は埋めて処分するしかない、という現状にも触れています。ただ殺して終わりなら、やる意味はない。食べるために、必要な分だけを獲る。獲ったなら最後まで使い切る。それが狩猟おじさんの考え方です。
使い切るには、さばく作業が欠かせません。内臓を取り出し、血にまみれ、匂いとも向き合う。撃った直後の獲物はまだ温かく、その体温を手で感じながらの作業になります。狩猟を始めた人の中には、鳥の処理の段階で「思っていたのと違う」と感じてやめてしまう人もいるそうです。
撃った獲物を放置してはいけない
撃った獲物をそのままにしていくのはNG。持ち帰るか、埋めるなどして適切に処分する決まりがあります。散弾の薬きょうも回収しなければなりません。それでも猟場では、放置された獲物や薬きょうを見かけることがあるといいます。
仕留めきれない「半矢」
狩猟おじさんが「正直、100%ないとは言えない」と話すのが「半矢(はんや)」です。弾は当たったのに仕留めきれず、獲物が逃げてしまうこと。
湖で撃ったカモが潜ってしまい回収できない。イノシシが弾を受けたまま走り去る。2発、3発当たっても駆け抜けていく個体もいます。逃げた先で倒れているのではと少しは探しますが、イノシシの速さで逃げられると見つけるのは困難です。だからこそ、撃つなら確実に仕留めること。そのための日頃の訓練が大切だと語ります。
※狩猟に関わる決まりの詳細は、お住まいの自治体や所管の行政機関の情報をご確認ください。
どこを狙うのか
イノシシなどの獣は、頭か、心臓のあたり(バイタルゾーン)を狙うのが基本です。太ももや前足に当たっても、そのまま逃げてしまうことがあります。
カモなどの鳥は、水面に浮いているところを撃つと、羽に弾かれて致命傷にならないこともあるそうです。飛び立ったところを下から撃ち、弾を体の中に入れる。または頭や首を狙う。また、散弾が身に残ると、食べたときに口の中から出てくることもあるのだとか。
想像以上に強い生命力
獲物の生命力は、人が思うよりずっと強いもの。罠にかかったイノシシは、時間がたつと自分の足を犠牲にしてでも逃げようとすることがあるそうです。狩猟をしていると、そうした場面にも向き合うことになります。
それでも、獲った肉を料理しておいしく食べるとき、しみじみと感じるものがある。野菜を育て、山の恵みと合わせて一皿にする。昼間は本業を持つ半自給自足の暮らしだからこそ、肉をさばき、鍋で煮込む時間が、命と向き合う特別な時間になっています。
骨のアクセサリーができるまで
狩猟おじさんがイベントで並べている骨や牙のアクセサリーも、こうした工程を経て作られています。獣の頭を大きな鍋で煮込み、骨をきれいにする。土に埋める方法もありますが、色が変わってしまうため、きれいに仕上げるなら煮込むのだそうです。
展示には、イノシシにはこんなに大きな牙がある、小さな動物にも牙がある、と知ってもらう注意喚起の意味も込めています。作り方を詳しく教えるつもりはないけれど、ラジオで「こんな世界もある」と知ってもらうくらいがちょうどいい、と狩猟おじさんは笑います。
出演者
- 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る
- 沢田隆志:GALATA COFFEE。生まれてからずっと食料はお店で買ってきた都市育ち
番組と出演者の詳しい紹介は番組ページへ。
