最初は、引き金が引けない。緊急銃猟とハンターの訓練、そして担い手不足|狩猟おじさんのおじラジ #12

狩猟おじさんのおじラジ #12 最初は引き金が引けない ポッドキャスト

第12回は、銃の所持許可の話の続きから、2025年9月に始まった「緊急銃猟」の話へ。市街地にクマが出たとき、市町村の判断で発砲できるようになった制度ですが、現場から見ると課題もあるそうです。

免許を取ったばかりのハンターは、最初はなかなか引き金を引けない。だからこそ必要な訓練。そして、ハンターの多くが高齢者という現実と、担い手をどう増やすかという難しい問題まで、狩猟おじさんに聞きました。

Spotify、Amazon music、Apple podcast、Audible、stand.fm、YouTube にて配信中!

この回の話題

時間話題
00:11わな猟にも体力がいる
01:02銃の所持は年々厳しくなる
02:059月1日から始まった「緊急銃猟」
02:57発砲許可は、警察から市町村へ
03:56撃てるのは、実績のあるハンター
04:53誰が、すぐに判断できるのか
06:40この地域では、クマはまだ駆除対象外
07:31撃つなら、外さない自信を持つための訓練
08:29新人ハンターは、最初は引き金が引けない
10:11省庁や団体がからみすぎて、統一性がない
11:58ハンターの8割は高齢者
12:50浜通りの帰還と、野生動物
14:37人手不足の中で、ハンターを増やすには
15:41ハードルを下げれば、技術が落ちる

9月1日から始まった「緊急銃猟」

銃の所持許可は年々厳しくなっている。誤って人を撃ってしまったというニュースが流れれば、厳しくなるのも仕方ない面はある。でもそれが、ハンターを増やしたい環境省と対立するような構図にもなっています。

一方で、2025年9月1日からは「緊急銃猟」の制度が始まりました。クマが市街地に出たとき、市町村の判断で、銃を持つハンターに発砲を許可できるというものです。これまでは、警察官が猟友会と一緒に現場に来て、その場で発砲許可を出していました。

撃てるのは、実績のあるハンター

とはいえ、銃を持って1年目の人が撃てるわけではありません。細かく読むと、クマなどを撃った実績があることが条件。市町村にクマが出たという通報があれば、警察と連携して近隣住民を避難させ、市町村が発砲を許可する。万が一、壁などを壊してしまったときのために、市町村で保険にも入る。そういう仕組みです。

誰が、すぐに判断できるのか

狩猟おじさんが疑問に思うのは、法律と現実のギャップ。これまでは現場にいる警察官がリアルタイムで判断できた。市町村に判断を仰ぐとなると、誰が緊急性を判断するのか、どれだけ素早くできるのか。その間に、クマは待ってくれません。人が襲われているような場面で、有効に機能するのかという問題もあります。

市町村にしたのは、有害鳥獣駆除のハンターを市町村が任命しているからでは、と狩猟おじさん。でも実際の駆除の現場に市の職員が立ち会うわけではない。ちなみに狩猟おじさんの地域では、クマはまだ駆除の対象になっていないので、出没情報は入ってきても撃てるわけではありません。新潟や秋田、北海道の自治体では、事前に訓練やシミュレーションをしているところもあるそうです。

外さない自信を持つための訓練

もし許可が出たら、狩猟おじさんたちは対応できる準備はしている。山でイノシシやシカ、クマを撃っているので、それが街中か山かに変わるだけ。撃てば外さない、という自信を持って銃を扱うために、年間数千発の弾を使って訓練しているそうです。

新人ハンターは、最初は引き金が引けない

狩猟おじさんは毎年、新人ハンターを猟に連れていくことがあります。所持許可も狩猟免許も取って、いざ獲物が見えて「撃て」と言っても、最初は引き金が引けない。日本人はそういう教育を受けているし、法律を覚えれば覚えるほど、外したらその先は、といろんなことが頭をよぎる。その間に獲物は飛んでいく。最初から迷わず撃てた人を見たことはないし、自分もためらったそうです。いきなり突っ込んでこられたら危ない。だからこそ、訓練が必要なのです。

からみすぎて、統一性がない

日本では何かを決めるとき、環境省と警察のように管轄が分かれていたり、判断するのが警察なのか市町村なのか猟友会なのかハンター個人なのか、いろんなものがからみすぎて統一性がない。農業の世界でも同じようなことがある。それが緊急時に問題になる。震災や原発事故のときもそうだったはず、と狩猟おじさん。

ハンターの8割は高齢者

狩猟の世界は、少子高齢化に似ている。福島県では、ハンターの8割ほどが60歳、70歳以上の高齢者だそうです。あと10年たったら、教えて引き継いでいく人もいなくなるかもしれません。

浜通りの帰還と、野生動物

狩猟おじさんが気にしているのは浜通りのこと。原発事故で立ち入りが制限されていた地域が少しずつ解除され、戻ってきた人が農業を始めたり、地域を盛り上げようとしたりしている。でもそれは、十数年手つかずだった場所の野生動物と対峙することでもあります。クマは出ないと言われていた浜通りでも、出るようになった。そのとき、「なんとかしてください」と言われても、誰がやるのか。

人手不足の中で、ハンターを増やすには

一般の仕事でさえ人手不足が叫ばれているのに、もっとマイナーな狩猟の世界で人を増やすのは難しい。銃が楽しい、肉がおいしい、だけではなかなか続かない。自分で命を奪うのだから、使命感や道徳的な意味を理解してもらわない限り、純粋には増えていかない、と狩猟おじさんは考えています。

かといって、所持許可のハードルを下げれば技術力が落ちる。わなをかけたら翌日かかっていた、なんてことはなく、イノシシの嗅覚は人間の何十倍もあるので、その裏をかかなければいけない。経験値が必要で、教える人も必要です。だからこそ、18歳や20歳になる前の若い世代から、こういう仕事があることを知ってもらいたい。隆志さんも、資格を取ったら一度山に入ってみるかどうか「考えてみよう」とのこと。次回は、銃そのものについて聞きます。

印象に残った一言

1発目からパーンって引き金を引いた人を、見たことがないんだよね。

前後の回

出演者

  • 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る。Instagram / note
  • 沢田隆志:移動販売の珈琲店「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。生まれてからずっと食べ物はお店で買ってきた都市育ち

番組と出演者の詳しい紹介は、GALATAの番組ページへ。