「半」だから、誰でも始められる。ベランダのミニトマトから育てる生きる力|狩猟おじさんのおじラジ #4

狩猟おじさんのおじラジ #4 「半」だから誰でも始められる ポッドキャスト

この番組で何度も出てくる「半自給自足」という言葉。狩猟おじさんは、どんな思いでこの言葉を使っているのでしょうか。第4回は、その考え方をじっくり聞きました。

完全な自給自足は、ちょっと難しい。だからこその「半」。お金で買うものを少しずつ減らし、自分でできることを少しずつ増やしていく。ベランダのミニトマト1株からでも始められる、もうひとつの暮らし方の話です。

Spotify、Amazon music、Apple podcast、Audible、stand.fm、YouTube にて配信中!

この回の話題

時間話題
00:46「半自給自足」って、どんなイメージ?
01:34本業の収入もある。文明の力も使う
02:22完全な自給自足は、限られた人しかできない
03:07まずは支出を少しずつ減らす
03:53畑がなくても、ベランダのプランターから
04:38生きる力を増やし、伝えていく
05:32お米は、農家さんの手伝いでいただく
08:43震災のあと、実践できた人とできなかった人の差
11:51自分に目を向けると、できることがはっきりする
13:29仕事のウェイトを減らすという視点
15:59勝ち組は、ひとつじゃない
18:16これは、選択肢のひとつの提案

完全じゃないから「半」

狩猟おじさん自身、野菜を作ったり、有害鳥獣の駆除をしたりはしているものの、その収入だけで暮らしているわけではありません。本業も別にあり、ガソリン代もかかるし、携帯電話も使う。文明の力も使いながら、それ以外の部分をなるべく自給に近づける。だから、あえて「半」自給自足という言葉を選んでいるそうです。

仙人のような完全な自給自足には、それなりの環境や準備が必要です。子どもがいれば、学校の問題もある。憧れはあっても、限られた人しかできない。

まずは、支出を少しずつ減らす

狩猟おじさんが考えるのは、たとえば月に30万、40万円稼いで、コンビニで買い、外食をしている人でも、その支出を少しずつ抑えていくこと。スーパーで買っていたナスやトマトを、ちょっと自分で作ってみる。

畑がないとできない、土地を買わなきゃいけない、というイメージがあるかもしれません。でも、ベランダのプランターで、自分が食べる分くらい。10回買いに行くうちの3回、4回分でもいい。自分でできること、作れるものを、少しずつ増やしていく。それを狩猟おじさんは「生きる力」と呼んでいます。

生きる力を、伝えていく

さらに、お金の代わりに別のことをかけて、農園を借りたり、別のコミュニティに入って畑の一部を使わせてもらったり。そうして生活の中に「自分で生み出す」ことを取り入れていく。それは何かが起きたときの備えにもなるし、「この野菜はこうやって作るんだ」「ここで失敗したんだ」と伝えていくことで、後継者がいなくなることへの対策にもなります。

お米は、農家さんの手伝いで

お米はどうしているのかというと、農家さんのお手伝い。田んぼは、農家としての登録などが必要で、自分が食べる分だけを手に入れるのは難しいそうです。そこで春は田植えや草刈り、秋は籾運びを手伝い、その報酬としてお米をいただいています。

それでも、子どももいるので、口に入るものすべてを自給するわけにはいかず、買う分も出てくる。電気やガスまで、となると、まだまだ。それでも、普通に暮らすより明らかに支出は減っています。そこまで行かなくても、いざというときに困らない技術を持っておく。それを伝えられる自分、提案できる自分でありたい、と狩猟おじさん。

震災のあと、実践できた人とできなかった人

東日本大震災のとき、同じように考えた人はたくさんいたはず。でも10年以上たった今、実際に実践できている人はあまりいない。その差は何なのか、と隆志さん。

狩猟おじさんは、できないわけではない、と言います。ただ、人はずっと人に頼る生活をしてきた。縄文時代のように自分たちで獲物を獲っていた時代から、だんだんお金で物を買い、誰かが作ったものに頼るようになった。米不足、農家さんや猟師の減少といった問題が起きても、自分に目を向けるのではなく、作ってくれる誰かに目を向けてしまう。身近になくなれば、よその国から。そして「なんでこんなに高いんだ」「なんで物がないんだ」という不満や不安が出てきています。

自分に目を向けると、できることがはっきりする

「それは狩猟おじさんだからできること」と思う人もいるかもしれない。でも、人は誰でも何かしらできることがある。ベランダのミニトマトでもいい。ひとつのものが育っていく過程を見る。自分で採って、口に入れる喜びを知る。そんな小さなことから自分に目を向けていくと、空論ではなく、本当にできることとできないことがはっきりしてくる。

本当にできないことは、コミュニティの中で誰かに頼ればいい。その頼り方も、お金ではなく、自分にできることと相手にできることの物々交換で。そんなやり取りが少しでも増えれば、もう少し楽に生きられるのではないか。

仕事のウェイトを減らすという視点

半自給自足と聞いて、食料の調達ばかりに目がいっていた隆志さん。実は、お金を稼ぐための仕事のウェイトを減らすという視点もあるのだと気づきます。

お金を追い詰めていくと、日々がつらくなり、そのストレスを解消する術を探しても、また仕事しかない。何十万円も減らせ、という大それた話ではなく、数万円でも支出が減れば、その分の時間を別のことに使える。選択肢が増える。「人って、こんなに切羽詰まらなきゃいけなかったのかな」と、狩猟おじさんはよく思うそうです。畑仕事も汗をかいてきついけれど、違うきつさ、生きていくうえでの楽さを、もう少し味わってもいいんじゃないか、と。

勝ち組は、ひとつじゃない

隆志さんは、みんなが六本木ヒルズの高層マンションやいい車を頂点としたレースに勝手に入れられて、うまくいかない人が大半で、それをつらく感じているような感覚がある、と言います。

学生に夢を聞かれて「起業して社長になります」と答える人がいる。それはそれでいい。でも同じくらい、競争の中で心を病んだり、「自分にはできない」と感じたりしている人もいる。勉強ができない、仕事ができないからダメなんじゃない。目を変えれば、幸せは違うところにもある。そしてもし、いくらお金を積んでも物が手に入らない時代が来たら、誰が勝ち組になるのか。実際にやらなくても、知識として知っている「生きる力」は、心のよりどころにもなります。月末にお金がなくてギスギスするより、「まあ、食べ物はあるし」と思える余裕。それが、人の思考を変えるかもしれません。

これは、選択肢のひとつの提案

これが正しい、あれが悪い、と言うつもりはない、と狩猟おじさん。世の中が利便性を求めて変わっていくことも、誰かの選択です。そのいろんな選択肢の中に、半自給自足という考え方、自分自身の生きる力という考え方が、そろそろ入っていってもいいのでは。狩猟も、あくまでその手段のひとつ。そんな思いを、このポッドキャストを通して少しずつ伝えていきたいそうです。

印象に残った一言

人って、こんなに切羽詰まらなきゃいけなかったのかな、ってよく思うんです。

前後の回

出演者

  • 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る。Instagram / note
  • 沢田隆志:移動販売の珈琲店「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。生まれてからずっと食べ物はお店で買ってきた都市育ち

番組と出演者の詳しい紹介は、GALATAの番組ページへ。