目の前にクマがいても、撃ってはいけない。ハンターから見たクマ出没問題|狩猟おじさんのおじラジ #5

狩猟おじさんのおじラジ #5 目の前にクマがいても撃てない ポッドキャスト

収録は2025年8月2日。テレビやネットでは連日、クマの出没や被害のニュースが流れていました。第5回は、ハンターである狩猟おじさんに、クマ出没問題をどう見ているのかを聞きました。

クマが出たら、猟友会の人に撃ってもらえばいいんじゃないか。そう思っていた隆志さんですが、実はそう簡単ではないそうです。猟銃を持っていても撃てない理由、そして山の中で感じている変化の話です。

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この回の話題

時間話題
00:11連日のクマ出没ニュース
01:49須賀川でも、これまでいなかった場所で目撃
02:57原因と言われること。餌不足、耕作放棄地、山に入る人の減少
03:45今年は人への被害が多い
04:45クマが出たら、撃ってもらえばいい?
05:32有害鳥獣駆除は、ハンターが決めるわけではない
07:12目の前で家族が襲われていても、撃てない
08:482025年9月からの法改正
10:29カラスはよくて、カルガモはかわいそう?
13:40山に入ると、毎年景色が変わっている
16:52立ち止まって考える、いい機会

なぜ、クマが出てくるのか

今年は明らかに例年より多い印象。会津地方などでは、山に入ればクマを見かけたり、ちょっとした怪我をしたりということは以前からあったものの、今はクマが出るとすぐに大きく取り上げられるので、情報として多く感じるのかもしれない、と狩猟おじさん。隆志さんの住む須賀川市でも、これまでクマはいないと言われていた場所で目撃情報が出るようになりました。

狩猟おじさんは学者ではないけれど、とよく言われることを挙げてくれました。個体数が増えていること。温暖化で山の木の実がつかなくなり、餌が不足していること。森林伐採などで生息地が減っていること。そして耕作放棄地。今まできれいに管理されていた見通しのいい畑が草やぶになると、クマが隠れる場所ができて、どんどん家に近づいてくる。さらに、山に入る人そのものが減っていること。原因は一概には言えないけれど、今年は特に、人がけがをするような被害が多いのが気になるそうです。

猟銃を持っていても、撃てない

クマを実際に見たことがない隆志さんは、すぐ撃ってもらえばいいのに、と思ってしまう。でも、それはできません。

有害鳥獣駆除は、クマに限らず、アライグマでもハクビシンでも、ハンターが決めるものではありません。農業被害が出た、人が襲われた、という住民の声があがって初めて、市町村から「この動物を、この期間に駆除してほしい」という依頼が来る。収録時点では、福島県内でクマの有害鳥獣駆除の許可が出ているところはなかったそうです。毎週のようにクマの出没メールが届いても、ハンターにはどうすることもできないのです。

目の前で家族が襲われていても

では、畑仕事をしているときに目の前にクマが出たら?「ダメです」。たとえ目の前で家族が襲われていても、法律上、撃てない場所で撃てば銃刀法違反になってしまう。北海道では、駆除を依頼されて撃ったハンターが、撃ってはいけない状況だったとして銃の所持許可を取り消され、裁判にまでなったケースもあったそう。

これまで猟友会が呼ばれても、銃を撃たずに鬼ごっこのようにクマを追いやったり、罠を仕掛けて入るのを待ったりするしかなかった。それが2025年9月からは法律が変わり、条件がそろえば市町村の判断で発砲を許可できるようになります。ただ、自然に返すべきだと考える団体もあり、すべて駆除してしまえというのも極端。判断は難しいところです。

カラスはよくて、カルガモはかわいそう?

この時期、農業被害の対策としてカラスやカルガモを駆除することがあるそう。カラスだと誰も何も言わないのに、カルガモだと「なんで?」という声があがる。屋根裏にひそむハクビシンや、地域によってはタヌキが道端で倒れていても何も言わないのに、アライグマだと「かわいそう」。隆志さんも、一瞬かわいそうと思ってしまったそうです。アニメのキャラクターの影響なのか、クマも同じで、イノシシとは違う何かが人の感情に働く。それが、人が襲われると今度は「駆除してくれ」と逆に振れていく。

山に入ると、毎年景色が変わっている

では、そもそもなぜクマが人里に出てくるのか。耕作放棄地が増えているなら、なぜ担い手がいないのか。餌場が減っているなら、何が原因なのか。

狩猟おじさんは5年ほど前から、食材確保の一環として猟期に山に入り、猟期以外も有害鳥獣駆除で自然の中を見てきました。すると、毎年変わっていくのがわかる。去年ここで足跡を見た、ここで獲った、という場所に翌年下見に行くと、山の木が全部なくなっていることも。そして、その変化の多くは「人の手」によるものだそうです。登山道を歩くだけではわからない、山に入る人だからこそ感じる変化です。

暑い、寒い、餌があるかないか、というだけで動物が動いているわけではない。生態系の変化には、人が深く絡んでいる。クマ出没の問題は、根深いと狩猟おじさんは言います。

立ち止まって考える、いい機会

メディアも連日クマを取り上げ、専門家が解説する今。それは、人が立ち止まって考えるいい機会なのかもしれない、と狩猟おじさん。開発をどこまで進めていいのか。自分の置かれた環境に、何を備えておくべきか。クマの出没は、これから減ることはないだろう。だからこそ、一つひとつ解決していけば、ゼロにはならなくても、自然のあるべき姿、食物連鎖の流れに少しずつ戻していくことはできるのではないか。この話は、次回以降も続きます。

印象に残った一言

暑い寒い、餌があるないだけで動いているわけじゃなくて、そこには人が絡んでいる部分が大きいのかなっていう気がする。

前後の回

出演者

  • 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る。Instagram / note
  • 沢田隆志:移動販売の珈琲店「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。生まれてからずっと食べ物はお店で買ってきた都市育ち

番組と出演者の詳しい紹介は、GALATAの番組ページへ。