キュウリは1日で2倍に。畑と物々交換、YouTubeで覚えた解体――「半自給自足」のリアル|狩猟おじさんのおじラジ #3

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朝3時の罠の見回りが終わったら、次は畑。第3回は、狩猟おじさんの「その後」の時間を聞きました。

1日で2倍、3倍に育つキュウリ。食べきれない野菜は、ご近所との物々交換へ。ジャムや梅酒、味噌、燻製といった保存食づくり。そして、獲ったイノシシのさばき方はYouTubeで覚えたという話まで。お金で買うより割に合わないこともある「半自給自足」が、なぜ回っていくのか。そのリアルをお届けします。

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この回の話題

時間話題
00:33前回のふり返り。罠のチェックのあとは何をしている?
01:117月は夏野菜の収穫期。ピーマン、トマト、ナス、キュウリ
02:00須賀川はキュウリの産地。1日で2倍、3倍に育つ
03:10安定して収穫するには、家族で食べきれない量になる
04:25畑の土と野菜には相性がある
05:31ブルーベリーとラズベリーを育てる理由
06:21ご近所との物々交換と、作り方を教わるコミュニティ
07:39ミニトマトを育てるなら、苗はホームセンターで
08:43半自給自足のコスパは?
11:11保存食づくり。ジャム、梅酒、梅干し、味噌
13:57燻製や干し肉。肉の加工はYouTubeで学ぶ
15:04初めてのイノシシ解体は、三脚にスマホを立てて
16:56デジタルデトックスのセミナーで感じた矛盾
17:56便利なものも使う。それが「半」自給自足

キュウリは、1日で2倍に育つ

収録は7月中旬。畑は夏野菜の収穫期まっただ中です。狩猟おじさんが1年に育てる野菜は、なんだかんだで20〜30種類。この時期に毎日のように収穫するのは、ピーマン、トマト、ナス、キュウリといった定番の野菜です。

収録している須賀川市は、キュウリの産地として知られています。キュウリ農家さんは「朝晩2回収穫しないと、どんどんできてしまう」と言うほど。狩猟おじさんの畑でも、スーパーで見るくらいのサイズのキュウリが、次の朝には2倍、3倍に。2日も置こうものなら、ウリのように大きくなって大味になってしまいます。

安定してとるには、食べきれない量になる

「家族が食べる分だけ植えればいいのでは?」と思うかもしれません。でも、1株だけだと、その株が終われば収穫も終わり。野菜には出来・不出来の年もあります。コンスタントに収穫するには、ある程度の本数を植える必要があります。その結果、この時期は「本当に食べきれないくらい」とれるのです。

畑と野菜にも、相性がある

畑の土質や作り方によって、育つ野菜・育たない野菜があります。狩猟おじさんの畑では、白菜のような葉物が何度やってもうまくいかないそうです。

ご近所が作らないものを、あえて作る

食べきれない野菜は、「キュウリは買うもの」という知り合いや、仕事関係の人に配ります。そして半自給自足で大事なのが、ご近所との物々交換です。

狩猟おじさんの周りは、みんな畑をやっている土地柄。本格的に自給自足をしている家もあれば、出荷している農家さんもいます。目の前の家はブドウ農家さんだそうです。そこで狩猟おじさんは、周りが作っていないものを確かめて、あえてそれを作ります。たとえば、甘いミニトマトは意外と誰も作っていない。

ベリーをジャムにして、交換する

狩猟おじさんの家で育てているのが、ブルーベリーとラズベリー。獲った肉に合わせるために植えたものです。木なので最初の2年ほどはほとんど実がならず、3年目で少しずつ。今年はどちらも大量で、ジャムづくりに精を出しています。その瓶を配って、代わりに別のものをもらう。お互いにウィンウィンの関係です。

ご近所のコミュニティに入ると、作り方もいろいろ教えてもらえます。それも半自給自足の楽しみのひとつだそうです。

まずはプランターでも

「じゃあミニトマトを作ろうと思ったら、まず何をするんですか?」と沢田。答えは「苗を買ってくる」。苗屋さんもありますが、前回の罠と同じく、ホームセンターでも花と一緒に並んでいます。トマトならプランターでも育てられるので、都会のベランダで試してみるのも面白いかもしれません。

コスパだけで見れば、買ったほうが安い

「今風に言うと、コスパとかタイパはどうなんですか?」という沢田の質問に、狩猟おじさんは正直に答えます。「突き詰めると、買ったほうが安い」。

苗代や肥料、手間をかけてとれる量は、大量生産されて売られている野菜にはかないません。農家さんのように一定の規模で出荷して利益が出るなら別ですが、半自給自足くらいの規模では、なかなか割に合わないそうです。

それでも続けるのは、お金に換えられないものがあるから。

  • 食べたいときに、いつでも手に入る
  • 自分で作れるという経験が得られる
  • 都会ではできない、田舎ならではの暮らし方ができる

そして、コミュニティの中で回すことで、割に合うところまで近づけられます。翌年からは自分で種をとって苗を育てる。キュウリがダメだった年は、たくさん作っている人から苗や野菜を分けてもらう。そうやって物々交換を重ねるうちに、出ていくお金が減っていくのです。

保存食で、とれすぎた季節を延ばす

もうひとつの工夫が保存食です。

保存食どんなもの
ジャム自家製のブルーベリー、ラズベリーで
梅酒・梅干しベースのお酒は買ってきて漬ける
味噌大豆を鍋で煮て、塩と麹を混ぜて寝かせる。食べられるのは1年後
燻製・干し肉獲った肉を加工する(次の章で)

味噌は1年寝かせるので、最初の年は多めに仕込むのがコツ。とはいえ、正解がわかるのは1年後です。不安になりませんか?と聞くと、カビが出たり、定期的に混ぜたりするたびに人に聞いて確かめるとのこと。昔ながらの保存食づくりを続けているお母さんも、頼れる先生です。最近はネットにやり方も載っていますし、味噌づくりキットもあります。「最初はキットからでもいいかも」と狩猟おじさん。

イノシシのさばき方は、YouTubeで覚えた

獲った肉は、燻製や干し肉にして保存します。その加工の仕方を学んだのは、なんとYouTube。それどころか、獲物のさばき方そのものもYouTubeで覚えたそうです。

狩猟おじさんの周りには、獲物を自分でさばいて食べる人がいませんでした。先輩の猟師さんたちも、とったら埋めて終わりという人が多く、本格的にさばける人が近くにいなかったのです。

初めての解体は、冬の寒空の下で

初めての獲物はイノシシ。三脚にスマホを立て、冬の寒い中でYouTubeを見ながらさばきました。動画が先に進んでしまっては戻し、肝心なところは見よう見まね。

今は家の裏で吊り下げてさばけますが、当時は何もなし。コンクリートを練る四角い容器(「舟」)にイノシシを入れ、水をかけながらひっくり返し、何時間もしゃがみ込んで作業。かかった時間は3、4時間。その後数日はひどい筋肉痛だったそうです。

デジタルデトックスのセミナーで感じた矛盾

先日、狩猟おじさんは「携帯を手放して自然に触れよう」というデジタルデトックスのセミナーで、半自給自足を紹介しました。でも、自分の暮らしをふり返ると、Instagramで発信し、YouTubeでやり方を学び、ポッドキャストで話している。「ちょっと矛盾しちゃった」と笑います。

でも、それも含めての「半」自給自足です。仙人のように山にこもるわけではなく、都会の暮らしとの狭間で、便利なものは使う。スーパーで買うものは買うし、コンビニのコーヒーも飲む。そのうえで、今の若い人でもやれる暮らし方として発信していきたい。それが狩猟おじさんの考えです。「半自給自足」という言葉については、次回じっくり聞きます。

印象に残った一言

突き詰めると、買ったほうが安い。でも、交換し合うコミュニティがあって初めて、小さく作っていても割に合ってくるんです。

前後の回

出演者

  • 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る。Instagram / note
  • 沢田隆志:移動販売の珈琲店「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。生まれてからずっと食べ物はお店で買ってきた都市育ち

番組と出演者の詳しい紹介は、GALATAの番組ページへ。