獲ったイノシシは、穴に埋める。福島のハンターの現実と、二本松の緊急銃猟|狩猟おじさんのおじラジ #19

狩猟おじさんのおじラジ #19 獲ったイノシシは穴に埋める ポッドキャスト

第19回は、11月9日に二本松市の新殿小学校で行った公開収録の後半です。

福島県では、獲ったイノシシの多くは穴に埋めるだけ。それでも税金を払って猟をするハンターの現実。二本松市で始まった緊急銃猟の説明会、人を餌と認識するクマへの懸念、太陽光パネルと野生動物の関係、そして冬の暮らしまで話しました。

Spotify、Amazon music、Apple podcast、Audible、stand.fm、YouTube にて配信中!

この回の話題

時間話題
00:11獲ったイノシシはどうなる?
01:17多くは穴に埋めて終わり
02:26ハンターを増やせと言われるけれど
03:31アライグマ1匹2000円、ヒグマ1頭1万〜2万円
05:35二本松市の緊急銃猟の説明会
06:36出動できるのは、条件を満たしたハンター
07:37夜間も撃てるようになる
08:39二本松でもクマが出るところ
10:44人を餌と認識したクマ
12:59人里に降りてくるのは、争いに負けたクマ
13:59太陽光パネルと野生動物
19:20撃つには地権者の了解がいる
21:27冬の暮らし
23:29ニホンミツバチの蜂蜜

獲ったイノシシは、穴に埋める

猟期に獲ったイノシシはどうなるのか。福島県では放射能の影響で出荷制限がかかっていて、商売には回せません。自分で食べることは自粛要請で、あくまで自己責任。キノコと同じで、人にあげてはいけない。狩猟おじさんは自分でさばいて食べていますが、基本的には穴を掘って埋めて終わり、という人がほとんどだそうです。

11月15日から3月15日までの4か月ほどのために、1万円を超える狩猟税を払って、イノシシを撃って、穴に埋める。それが今の福島のハンターの現実です。

お金にならない駆除

狩猟おじさんは個人事業主で、本業は建設・土木関連のコンサルタント。50歳を超え、ある程度余裕があるからできている面もある。若い人が数万円の狩猟税を払い、車が買えるほどの銃と、1発撃つたびにジュース代が飛んでいく弾を使うのは大変です。

駆除でお金になると思っていた隆志さんですが、アライグマ1匹で2000〜3000円。北海道のヒグマでも、1頭1万円か2万円いかないくらい。命がけで撃って、ガソリン代や弾代をかけて、それでは割に合わない。北海道のハンターが嫌がったのも無理はない、と狩猟おじさん。そこから手のひらを返したように、街中で発砲できる緊急銃猟などが模索されるようになりました。

二本松市の緊急銃猟

11月の頭、猟期前の安全射撃の場で、二本松市が緊急銃猟の説明会を開いたそうです。市内で駆除に関わる銃を持ったハンターは65人。でも緊急銃猟で出動できるのは、年に2回以上射撃訓練をしていて、大型の獣を撃った経験がある人だけ。カモやキジなどの鳥しか撃たない人もいて、持っている銃もスキルも合わないことがあるからです。

さらに、仕事をしていて土日しか出られない、昼間しか出られない、といった事情もある。二本松市では、エントリーした人全員に事情や持っている銃をヒアリングして、いざというときに誰に声をかけるか、シフトのようなものを組むそうです。

夜間も撃てるようになる

これまで、狩猟も駆除も、日の出から日の入りまでしか発砲できませんでした。緊急銃猟では夜も撃てるようになる。ただし夜間の訓練が必要で、それができる場所は全国にまだ1、2か所しかないため、あちこちでできるようにしようとしているそうです。

二本松市でも、岳温泉やエビスサーキットのあたりでは、クマが当たり前のように出る。ただそこは鳥獣保護区で、撃てない。クマもそれをわかっているのか、と狩猟おじさん。ポリスメールのクマ出没情報も、たいていはそのあたり。それが今年は二本松城のあたりまで来たそうです。田舎の二本松市でも、緊急銃猟を考える時代になってきました。

人を餌と認識したクマ

岩手県の温泉で、清掃中の方がクマに襲われた事件。狩猟おじさんたちがいちばん恐れているのは、クマが人を餌として認識してしまうことです。人を襲ったクマを捕まえても、それを見ていた別のクマが学習してしまうかもしれない。かつてクマの天敵はオオカミで、その後は人間が食物連鎖の頂点だった。でも人を餌と認識すれば、丸くなって防御姿勢をとっても効かなくなる。人との線引きを、そろそろ考えなければいけない、と狩猟おじさんは言います。

人里に降りてくるクマは、実はごく一部。サルと同じで、強いクマは山の中の縄張りにいて、縄張り争いに負けた弱いクマが、餌が取れずに降りてくる。お腹が空いて、音を鳴らしても何をしても突っ込んでくるしかない状態になっている。須賀川の街なかでも、発砲音が聞こえる時代になっていくかもしれません。

太陽光パネルと野生動物

この日、隆志さんは来る途中や狩猟おじさんの家の近くで、山を削った太陽光パネルを多く目にしたそう。そこに住んでいた動物はどこに行ったのか。狩猟おじさんは「なかなか言いづらいけど、ないとは言えない」。パネルだけでなく、資材を運ぶ道もつくられる。猟期前に下見に行くと、去年獲っていた山の木が切られていることもあるそうです。

さらに、田畑に出たキジを撃とうにも、100mほど先に太陽光パネルがあれば、外したときに流れ弾が当たるので撃てない。最近は個人向けの小さな太陽光パネルが田んぼや畑にできることも増えていて、きちんと管理されないと草だらけになり、小動物のすみかになる。パネルの下に向かって銃を撃つわけにもいかないので、いい逃げ場になってしまう。人の手が入って管理されている場所には、動物は寄ってこないのですが。

撃つには、地権者の了解がいる

狩猟者登録をすると、撃っていい場所とダメな場所が色分けされた地図をもらいます。そのうえで、田んぼや畑、山で猟をするには、地権者の了解が必要。これまでなら「誰々さんの田んぼだから、ちょっと撃たせてね」と言いに行けた。でも小さな太陽光パネルの土地は業者の持ち物になっていて、誰に了解を取ればいいかわからないことも。県外や海外の資本が入っていることもあり、わなをかけてほしいと頼まれても、かけられない場所が出てくるかもしれないそうです。

冬の暮らし

冬になっても、暮らしはそれほど変わらない、と狩猟おじさん。ただ、肉をさばくのは暑い時期はリスクが多いので、寒い冬のほうがいい。外でさばいて、スモークして保存食にする。畑は冬野菜を収穫したら、玉ねぎを越冬させるくらい。猟も、雪が積もってくれたほうが、白い中で動物が見やすく、足跡もわかるのでありがたいそうです。

ニホンミツバチの蜂蜜

今年は蜂蜜もとれました。6段積み上げた巣箱のうち、2段分をとっただけで、1升瓶1本分くらい。冗談かと思っていたら、本当にとれて驚いたそう。残りの半分は、蜂が冬を越すための蜜として残しておき、春には新しい女王蜂が入れ替わって分封していくのだとか。猟期が始まったら、このあたりで鉄砲の音がしても、それはたぶん狩猟おじさんです。

印象に残った一言

一番恐れてるのは、もう人を餌として認識しちゃうこと。これがやっぱり怖い。

前後の回

出演者

  • 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る。Instagram / note
  • 沢田隆志:移動販売の珈琲店「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。生まれてからずっと食べ物はお店で買ってきた都市育ち

番組と出演者の詳しい紹介は、GALATAの番組ページへ。