第7回も、前回に続いてアーティストの松本悠以さんをゲストにお迎えしました。後編では、松本さん自身の自然に寄り添った暮らし方と、狩猟おじさんの「半自給自足」にも通じる、お金との向き合い方を聞きました。
20代で「お金を信じきれない」と考えるようになったのはなぜなのか。物々交換が生む循環、肩書きへの違和感、そして「腐る喜び」という文化を広げたいという思いまで、松本さんの考え方に迫ります。
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この回の話題
| 時間 | 話題 |
|---|---|
| 01:02 | 松本さんの、自然に寄り添った活動 |
| 02:01 | 白河のコミュニティカフェの畑部 |
| 02:57 | 展示の前から、展示場所に通う |
| 03:48 | 松本さんの考える「半自給自足」 |
| 04:43 | お金を信じきれない |
| 06:26 | 建築の仕事で感じたこと |
| 08:09 | お金に依存しすぎない |
| 09:51 | 物々交換の循環が、心の豊かさに |
| 11:42 | このラジオの裏テーマ |
| 13:25 | 高校で腐ってから、すべてを考え直した |
| 15:07 | 29歳で本格的に活動を始めた |
| 17:41 | 肩書きの悩み |
| 21:23 | 「腐る喜び」という文化をつくりたい |
畑部と、地域に根ざした展示
大玉村に住んでいたころは自分の畑があったという松本さん。須賀川に来てからは畑を探しているところで、代わりに白河にあるコミュニティカフェ「エマノン」の畑部に参加したり、シェア畑に関わったり、物々交換も続けたりしています。
白河までは電車で。畑のためだけではなく、10月に予定していたエマノンでの展示に向けて、4月から通い続けていたそうです。展示というと、白い空間に作品を並べて帰るイメージがあるけれど、そうではなく、学生の多いカフェでみんなと交流しながら、どんな展示にするか考えていく。もっと地域に根ざした展示をしたい、という思いからです。畑部では、農業系の高校に通う子やスタッフさんが教えてくれて、採れたトマトやキュウリはお客さんにも出しているとか。
お金を、信じきれない
狩猟おじさんが聞いたのは、アーティスト活動と両立できる、松本さんにとっての「半自給自足」とは何か。
松本さんは、昔からお金という存在を信じきれなかったそう。それまでは食べ物を全部お金で買っていたけれど、もしお金に価値がなくなったらどうなるんだろう、と考えた。そのとき、直接つくれる人がいちばん強いんじゃないかと思ったのが、興味を持ったきっかけでした。お金に頼りすぎない、依存しすぎない。生きていくための柱を何本も持ちたいと思ったのだそうです。
遊ぶにも服を買うにもお金がかかる20代で、そんな考えに至ったことに、狩猟おじさんも隆志さんも驚きます。
建築の仕事で感じたこと
建築に興味を持ったのも、小さいころから間取り図のチラシが好きだったことに加えて、「なんで2階にいて床が落ちないんだろう」「なんで素直に信じていいんだろう」という気持ちがあったから。建築事務所で働いていたときには、自分のつくりたいものを100%つくることはできないと感じた。建物はお金を出してくれる人がいて初めて建つ。お金を出す人は基本的にお金を生む建物をつくりたいから、形もそうなっていく。建物の中に住んでいるということは、自分もお金に支配されているのかな、と考えたこともあったそうです。
お金を悪だと思っているわけではなく、必要なときは使う。ただ、完全に依存したくない。依存しないほうが心が豊かな気がする。お金がないと世の中しんどい、と囚われてしまうけれど、もうちょっと別のやり方もあるんじゃないか。それを半自給自足に考えているのだそうです。ちなみに収録場所のオーナーは「お金で解決できることはお金で解決したほうがいい」派なのだとか。
物々交換の循環が、心の豊かさに
狩猟おじさんの子どものころは、近所のおばちゃんが物をくれるような、物々交換的な感覚がかろうじてあった。でも今は、物々交換ですら難しい。野菜をあげたら、お金ではなく別のもので返ってくる。そんな関係を築くのは簡単ではありません。
松本さんは、そこで循環が生まれることが心の豊かさにつながると気づいたそう。狩猟おじさんは、今の若い人の中にもこういう考えを持つ人がいることが救いになるし、自分の活動も間違いじゃないと実感できると言います。大人数を変えなくても、共感し合える小さなコミュニティができていけば、心を豊かにしたり、面白いこともやれるのではないか、と。
このラジオの裏テーマ
実はこの番組には裏テーマがある、と隆志さん。土も触ったことがなく、桃は土の中にできると思っていたくらいの隆志さんを、半自給自足側に引きずり込むこと。最終回には、汗まみれで山の楽しさを語る隆志さんがいるかもしれません。
腐ってから、すべてを考え直した
お金を信じきれなくなったきっかけは何だったのか。親友に裏切られたとか、家族が借金を抱えたとか、そういうことではなく、高校生のときに腐った経験だったそう。そこから、日常のあらゆることを一から考え直すようになった。当たり前だと思っていることは、本当にそうなのか。大学卒業後は就職活動を一切せず、アルバイトをかけ持ちするしんどい時期もあった。世界がちょっと違って見えるようになった、と松本さん。
疑問を抱いても、それを表現する方法がなければ、思想で終わってしまう。人に伝わる表現方法を自分で生み出せることがすごい、と狩猟おじさん。とはいえ、最初からポセミンで生きていくと決めていたわけではなく、本格的に活動を始めたのは29歳から。「25歳までに人生の方向性を決めたほうがいい」とよく言われたけれど、人によってタイミングも歩く速度も違う、と思っていたそうです。そこから今では、須賀川のあちこちでポセミンの絵やキーホルダーを見かけるようになりました。
肩書きの悩み
みんなが当たり前だと思っていることに疑問を持ち、作品にして問いかける。隆志さんにとって、松本さんはまさにアーティスト。でも本人は、アーティストという言葉もあまりしっくり来ていないそう。画家でもないし、絵描きにも収まらない。いちばん正しいのは「松本悠以」なんじゃないか。伝わりやすさのためにアーティストと名乗っているけれど、「表現者」と言っていた時期もあったとか。
狩猟おじさんも、SNSの肩書きには悩んだひとり。今はトークで話すことから「話師(わし)」とつけています。肩書きをつけると、その中に収まってしまう。隆志さんいわく、元サッカー日本代表の本田圭佑さんは、SNSに「地球人」と書いていたとか。
「腐る喜び」という文化をつくりたい
これからやりたいことを聞くと、「文化をつくりたい」と松本さん。こういう生き方もあると知って、興味を持った人が真似をしてくれたらいい。どの作品にも「腐る喜び」というテーマを込めていて、それを感じ取って、腐る喜びという文化が広がったらいいな、と。引きずり込むのではなく、興味のある人に届けばうれしい。隆志さんも「腐っていいんだ、と慰めてもらえた気持ちになる」。
収録時点では、10月にエマノンでの展示や大玉村のイベント、11月にはカフェでの個展が予定されていました。最新の活動は、松本さんのInstagramで確認してみてください。
印象に残った一言
お金に依存しすぎたくないっていうか、生きていくための柱を何本も持ちたいと思ったんです。
前後の回
出演者
- 狩猟おじさん:狩猟・作家・話師。福島で半自給自足の暮らしを送る。Instagram / note
- 沢田隆志:移動販売の珈琲店「GALATA COFFEE」を夫婦で営む。生まれてからずっと食べ物はお店で買ってきた都市育ち
- 松本悠以:須賀川市を拠点に活動するアーティスト。キャラクター「ポセミン」を描く(ゲスト)
番組と出演者の詳しい紹介は、GALATAの番組ページへ。
